私の防災講座の中でも必ず紹介する「危機的状況を終わらせる備え」。
わかりやすく説明すると「閉じ込めや動けなくなるなどで周囲からもライフラインからも孤立してしまったときに、一刻も早く救出してもらうための備え」です。

シグナリングの備えの重要性
- 地震でトイレに閉じ込められた
- 地震で家具に挟まって動けなくなってしまった
- 水害で家の屋上から動けなくなってしまった
など、ちょっと考えてみると「動けなくて避難できない」という危機は誰にも起こり得そうなことがわかると思います。
これは家だけに限った話ではありません。
- お店にいて、倒れた棚に挟まれて動けなくなってしまい、店員さんからも気づかれなかったら?
- 学校や職場でトイレに閉じ込められて、他のみんなは自分に気づかず外に避難してしまったら?
などの状況も考えてみると、あらゆる場所で「危機的状況を終わらせる備え」の必要性に気づくと思います。
この記事では、そんなときの「一刻も早く自分の状況に気づいてもらう」「自分の居場所を知らせて助けてもらう」ための術や備えはどういったものなのかをまとめていきたいと思います。
ちなみに、そのような術や備えを「シグナリング」と呼んでいるので、この記事でも「シグナリング」という言葉にして説明していきます。
具体的にはどんな備え?
具体的な道具の備えとしては、以下の3つ+αに分けてご紹介していきますす。
- スマホなどの通信機器+充電器やメモ帳など情報伝達できるもの
- ホイッスルなど音を出して聴覚に訴えるもの
- フラッシュライトや目立つ色のものなど視覚に訴えるもの
- (+α)日々の繋がりや仕組の活用
+αに関しては、非常時に自分の安否を確認してもらえる仕組みや人間関係をつくっておくことも、道具ではないですが重要な備えだと思っているので加えています。
一つひとつ具体的に見ていってみましょう。
情報伝達できるもの
まず、現代では通信や充電が途絶えない限りはスマホが一番のシグナリングツールです。
ただ、大規模災害時には通信が不安定になったり繋がりにくくなったり、その影響で電池の減りが早くなったりすることも多いので、これだけに頼り切るのも不安なところ。
スマホを使う場合は
- 充電器も備えとして携帯しておく
- 毎日充電してから持ち歩く
- 東日本大震災のときの「電話は繋がらないけどネットは繋がった」という教訓から、必要な人とはLINEやX(当時はTwitter)などのSNSで連絡を取り合えるようにしておく
- 171(災害用伝言ダイヤル)や災害用伝言板の使い方を必要な人と共有しておく
などを注意しておくと良いと思います。
色んな人からスマホに「無事?」などの連絡が来てやり取りが不必要に多くなりそうな場合は、アカウント名に「無事」と書いたりすることも必要最低限の連絡のみにして電池の減りを少なくするアイディアのひとつです。
お子さんやスマホを使いこなせない方の場合はGPSなども視野に入れてもいいかもしれません。
メモ帳に関しては、例えば今いる場所から移動しなければならない場合、書き置きをしておくことで自分がそこにいた痕跡を残すことができ、どこへ向かったのかも書いておけば何も残さないよりも圧倒的に発見してもらいやすくなります。
震災後に色々な施設で壁などにメモが張り出されている様子も見ますね。そういうケースでもメモ帳は活躍します。
できれば、水に濡れても大丈夫なメモ帳(最近はダイソーさんでも売ってます)と、削れば使える・残りがわかるえんぴつをセットで持っておくと良いと思います。
聴覚に訴えるもの
続いて、聴覚に訴えるものシリーズです。
ホイッスルや防犯ブザーなどは定番ですね。声を出すより圧倒的に体力を温存できますし、声がれも気にしなくてよくなります。
ちなみに、ホイッスルを使う場合、山岳救助などで使われる救助信号としては、1分間に6回(10秒に1回)笛を鳴らし、次の1分間は休むというのを繰り返すそうです(救助側が気づいた場合の応答信号は1分間に3回鳴らし、次の1分は休むとのこと)。
または、モールス信号のSOSである「・・・ーーー・・・」を音にして「ピッピッピッピーピーピーピッピッピッ」としても良いかもしれません。
いざというときの発想として、何も持っていなければ、金属×金属などぶつけ合わせたら大きな音が出るものを探してみたり、可能であれば指笛を練習しておくのもよいです。指笛は上手くならせればかなり遠くまで響くサバイバル術です。日々コツコツ練習…!
お子さんにホイッスルを持たせる場合、ホイッスルが吹けるか確認したり練習してみると良いと思います。我が家も実際に、未就学児の頃にいくつか買って吹かせてみて、一番吹きやすそうなものを持たせています。二つ穴のものはうちの子どもはとても吹きにくそうでした。
防犯ブザーに関しては、防災とはちょっと違いますが、お子さんには使い方をしっかり教えてあげると良いですね。以前まったく知らない子どもと公園で近くをすれ違ったときに、私と近づくタイミングでしっかり防犯ブザーを握っていて関心しました。
視覚に訴えるもの
音だけだと、その人がいる方向性やだいたいの場所まではわかるのですが、正確な位置を把握するまでは難しいこともあります。そのため、視覚に訴えるものもセットで備えておくと良いとされています。
また、視覚に訴えるものであれば、救助ヘリからなど音が聴こえないところからも見つけてもらえる可能性があります。
視覚に訴えるポイントとしては、光と色です。
- 光…ライト、太陽光を反射させる鏡など
- 色…周りから目立つ色合いのもの
太陽光を反射させる鏡はもしかしたらちょっとイメージつきにくい方もいるかもしれません。
実は鏡で太陽光を反射させると▼以下の動画のような感じで救助ヘリにも自分の居場所を知らせることができます。
目立つ色の物などとは比較にならないほど遠くまでシグナルを発することができるのがわかると思います。(とても貴重な動画などで使わせていただきます。ありがとうございます静岡県警様…!)
「山岳遭難救助隊のつぶやき」もし山で遭難してヘリが助けにきてくれた時、どうしたら見つけてもらえるか?動画Ver🙄手を振ることや、上着を振る。日中なら鏡を使って光を反射させることが効果的。地上の捜索には笛を吹くことも有効です。有事に備えましょう pic.twitter.com/rJB30hIhi3
— 静岡県警察地域部地域課 (@SP_chiiki) October 28, 2021
太陽光を普通の鏡で飛ばしたい方向へ反射させるにはちょっとしたテクニックも必要です(それ専用の鏡もあるほど)。普通の鏡や専用鏡のシグナリング時の使い方に関しては、日帰り防災サバイバル体験でも体験していただくことができます(天候による)。よかったらご参加ください。
また、使い方としては動きとコントラストに注意するとよいとされています。
- 動き…光や色を固定しているより、動かした方が気づかれやすい
- コントラスト…光なら暗いところから、色なら周りから目立つ色を選ぶと視認しやすい
よく防災用のライトに点滅機能がついているのは動きをつけるためですね。点滅機能は電池の消耗が激しいので、電池が少なくなっていたり点滅機能がない場合はライト自体を動かしたりするだけでも気づかれやすくなると思います。
コントラストも重要で、例えばアウトドアに出かけるときなどは、アースカラーのものばかりでなく派手色のレインウェアやグッズを持っていくのも良いですね。雨の日に街中で使うときも派手色の傘などは車からの視認性もあがって安全性がアップするのでおすすめです。
安否確認してもらえる仕組みや人間関係
最後に、災害時に街中や自宅で閉じ込められたり動けなくなったりして孤立してしまった場合などいざというときに安否確認をしてもらえる仕組みや人間関係を普段から作っておくことも重要な備えです。
高齢者や障がいを持つ人向けには、非常時の安否確認も含めて日々の見守りをしてくれるサービスが行政から用意されていたりもするので確認してみてください。
特に、家の中だと「スマホは充電中でトイレの中には持って行ってなかった」「トイレの中まではホイッスルなんか携帯していない」みたいな人も多いのではと思います。
そんなときに閉じ込められて動けなくなってしまったら…
家に一人のときはトイレのドアは開けておくっていうのも一つの手段ですが、「あれ、そういえばあの人大丈夫かしら?この時間はいつも家に一人だけど地震後に顔を見ないわね…」なんて近所の誰かに気づいてもらうのもとても大切です。
いざというときすぐ助けにきてくれるのは、遠くに住んでる親戚や友人ではなく、近所に住む知り合いです。
被災者からは「知り合いから助けた」という話もききます。きっと私もそうします。
必要以上に仲良くしなくとも、印象よくあいさつするだけでかなり違うと思います(私も近所でよくあいさつしてくれる人は覚えていますし、逆にあいさつしてもし返してくれない印象の悪い人も覚えています)。
近所の人と、いざというとき助けたり助けてもらえる関係性づくり、普段から意識できるといいですね!
シグナリングは備えよつねに
他の備えもそうですが、シグナリングに関しては特に!常に備えておくことが重要だと感じます。
どこでどうなるか本当に分かりません。
もしかしたら災害時ではなく、日常で家で一人のときにいきなりギックリ腰で全く動けなくなるかもしれませんし…(私がそうなったことある)
市販の防災リュックの中にホイッスルが入っていて、それを購入してそのまま玄関に置いてましたという話をよく耳にするのですが、ホイッスルはリュックに入れっぱなしでいいですか?という話です。
シグナリングに関しての話は「防災グッズはどこでどう使うのか?どこに備えておくのが適切なのか?」を考える良い題材でもあると思います。
シグナリングに限らず、ぜひあらゆる備えをこの観点から考えてみてください。
まだ読んでいない方は以下の記事もぜひ読んでみてください^^